前編）課題解決は、スタートがカギを握る
2022/11/16
「リスクマネジメント力をトレーニングする」、というとき、課題解決、問題解決、現状に違いを作るといった言葉をよく耳にします。これらは「解決」というゴールが意識されての言葉ですが、課題であれ、問題であれ、改善点であれ（以後、「課題」に統一します）、すべては発見（気づき）から始まります。
皆さんは課題に向き合われるとき、どんなことを意識していますか？
今回は、課題と向き合う時のオススメを、前後編にわけてお話しします。
課題とは、今をよりよくすることを目的として発見する
課題は、ときに「○○をやれていないから。◆◆がだめだから。他より劣っているから。他に負けているから」などといった、何かや誰かとの比較のもと、ダークな質感の動機から誕生しがちですが、私は、「今をより良くしたい、今をより良くしよう」との、きらりと光る未来をイメージしつつ向き合っていただくことをお勧めします。
以後は、私が勧める取り組みの姿勢を前提に話をしてまいりますが、「今をよりよくする」ことに取り組むためには、「自分やこの組織はさらにどうなりたいのか」「どんなことを手にしたいのか」といった「未来へ向けた自分や組織の願い、希望、要望」みたいなものが、なんとなくでもいいので、必要となります。
以前、5名ほどの社員数の経営者様(以後、Aさん)から、「会社の利益を増やしたい」という要望のセッション依頼をいただいたことがあり、その際、
松本）「どうして利益を増やしたいのですか？」
Aさん）「従業員のお給料を増やしてあげたい」
松本）「それは、社員の皆さんからの要望ですか？」
Aさん）「誰だってお給料は高い方がいいに決まっているでしょ」
松本）「もちろんお給料が増えたら皆さん喜ばれると思います。会社の利益を増やし、社員の皆さんへ還元くださることそのものにはもちろん賛成です。そして、会社の利益を増やすために、社員の皆さんに、今以上に働いていただくことになるかもしれません。そのあたりは、どうお考えですか？」
（＊細かくは割愛しています）
といったやり取りをし、Aさんとは根本で価値観が違っていることが確認できましたので、ご依頼をお断りした、ということがありました。
自分にとって大切なもの
私が感じた「価値観の違い」とは、Aさんの対話には「自分」しか存在せず、「自分の世界には、自分以外の誰かがいて、その一人一人と自分の価値観は違っているのかもしれない」という観点を感じられなかった、というものです。
Aさんが社員思いの経営者であることは間違いありません。そして、その思いと並行して、Aさんは「いい社長だと思われたい」「業績を伸ばして同業者に認められたい」といった「自分の望み」も、もっておられました。
もちろん、これらの望みはあって当然ですし、これらは使いようによって追い風となるモチベーションになりますので、あること自体は何の問題でもありません。
あくまでも、セッションは、課題に結果を作るための取り組みですので、そこからみると、「それは誰のどんな望みゆえの課題(取り組み)なのか？」「誰の何のために課題解決に向け行動するのか」が焦点なのであり
課題設定が
「社長として、自分がいい社長だとの評価を得るために何をどうするか？」
と
「社長として、社員に満足いく生活をしてもらうために何をどうするか？」
では、解決策が変わってくるであろうことは想像いただけることと思います。
繰り返しになりますが、課題としてどちらが良い悪いの話しではなく(そもそも、人を傷つけたり、不快にするそれでなければ、悪い課題というものが存在しません)、「スタートはどこか」、その設定を慎重に行うことが重要だということです。
思いは整頓して届けるのがオススメ
お勤め先の経営者から、突然、「私はあなたたちにいい暮らしをしてほしいと思っています。そのために、会社の業績を伸ばし、利益を増やし、君たちのお給料をアップさせます。ので、明日から○○してください」と、突然通告されたら、あなたはどう思いますか？
社長の気持ちは嬉しくても、他に方法はないのか？ 先に自分たちの都合も聞いてほしかったな、など、社長の発言が自分たちへの好意を背景としたものであることが理解できるだけに、複雑な気持ちになってしまう方もいるかもしれません…。
Aさんの会社は十分に一人一人の顔が見える社員数ですので、一人一人と面談し、現状の確認とともに、それぞれが思い描く「自分の未来」みたいなものを聴きとっていただいたうえで、組織としての方針を固めていただけるのなら、私はぜひともお力にならせていただきたかったです。
人にはそれぞれに目指す姿があり、ライフスタイルがあり、大切にしたいと思っていることがあります。
また、個々の目指す姿やライフスタイル、伴い、大切にしたいことは、時期によっても変化するため、「以前そうだった」は通用せず、これも、人生の節目節目(ふしめふしめ)で確認が必要なことです。
日々の忙しさに心を乗っ取られてしまうと、対話を行うことをもどかしく感じる人もいるかもしれませんが、そこを端折ってしまったことで、後々かえって時間や労力を費やすことになった、という例は少なくありません。
とはいえ、時間を作りたくても…というのもわからないではないので、悩ましいです…
いずれにしても、この記事を読んでくださっている皆さんには、あなたに何らかの課題がみえたとき、「それは誰の(ための)望みか？」という問いを自分に投げかけてみられることを私はお勧めします。
さて少し長くなってしまいましたが、「より良い解決のためには、どこから始めるのかがカギを握る」ということについて、少しはお伝えできましたでしょうか？
後編では、「どこから始めるのか」について、もう少し深堀します。
CMです
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