連載「人間関係を滑らかにする『言葉』のおけいこ」

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連載「人間関係を滑らかにする『言葉』のおけいこ」第6回(最終回)

2020/10/22

Lesson6 相手をざわつかせない言葉がけ

前回、労いの言葉として「無理しないでね」「疲れているようね」「忙しいでしょう?」「大変よね」といった言葉を例に挙げ、まずはこれらの言葉をかけられた時の対応を紹介しました。Lesson6では、今回の本題である「言葉をかける側に立った時にどうするか」について述べる前に、前回のおさらいも兼ねた補足の話をさせてください。

 

 

「自分を守る」行動を踏まえた言葉を

労いの言葉が登場する場面の多くは、「無理をしているであろうことを想像するのが難しくない場面」だと思います。そんな状況にあっても、人の精神状態はそれぞれですので、「気にかけてもらえてうれしいよ」と言う方もいれば、「見れば分かることをどうして尋ねてくるのだろう。答えに困る…。」など、好意とわかってはいても相手の言葉をまっすぐに受け取れないばかりか、自らの言葉から感じる棘のようなもので自らのダメージを深めるといった方もいると思います。

 

 

もし、皆様が「まっすぐに言葉を受け取れる状態にない」と感じた時には、前回お伝えしたように、言葉以外の方法でひとまず相手との会話を終わらせ、速やかに自分を安全地帯に置いてあげていただけることをお薦めします。

 

 

「自分を安全地帯に置く」とは、次のような「自分を守る行動」を踏まえたものと解釈してください。

 

・心にもない言葉が口をつき相手との関係をおかしくする可能性や、自己嫌悪に陥る可能性から自分を遠ざける。

 

・向けられた労いの言葉は、自己満足を目的とした言葉かもしれません。相手の自己満足への対応に費やすエネルギーは最小限にとどめて大丈夫。速やかに対話を終わらせ立ち去って。

 

 

また、真っ直ぐに受け取れる状態にないことを分かっていても、「ここは笑顔で対応した方が安心してもらえるのかな」と、相手を気づかい、自分を隠して「ありがとうございます。大丈夫ですよ」「ご心配いただきありがとうございます」と対応することを選んできた方もいるかもしれません。

 

 

このような、「相手の期待に応えた、相手を安心させるための対応」は、「あなたの思いは私に届いています」との意思表明でもあります。思いが届いたことを知り相手は安心し、それで対話を終わらせられる可能性はありますので、これも「限られた時間とエネルギーをできる限り使いたいところに使う」ために有効な選択肢の一つです。対応は一つに決めてしまわず、自分のエネルギー残量に応じて使いわけていただけたらと思います。

 

 

 

自分を語る

さて、ここからが今回の本題。自分が「無理をしないでね」などの労いの言葉をかける側に立った時、相手にできる限り負荷をかけずに思いを届けるにはどうしたらよいのか。

 

 

その方法として私が推薦するのは、「自分を語ること」です。「自分を語る」とは、「無理をしないでほしいのはどうしてか」をできるだけ具体的に言葉にすること、別の表現をするなら「背景を語る」ということです。

 

 

例えば、「あなたが無理を重ねて疲労が蓄積してしまうことで、あなたにとっての大事な場面で最高のパフォーマンスが発揮できず、もしあなたが自分を責めてしまうことにでもなったら…などという考えがよぎることがあります。私の不安を収めるためにも、休める時は休んでもらえるとありがたいです(例1)」や、「あなたは私にとって大切な人です。あなたが無理をして倒れたりしないか勝手に心配しています(例2)」などです。

 

 

これらはあくまで例ですので、具体的な内容は「あなたのそれ」を言葉にしてください。

もともとの関係にもよりますが、人は、目的が明らかではない他者からの好意に対し、自然と裏があるのではないかと探ってしまいます。その、「言葉の裏を探る」ことに費やすエネルギーが、人を消耗させる最たる要因です。よかったら、あなたが大切に思う人へかける言葉は、例1のように「相手が想像をめぐらさなくてもいい言葉」にしてあげることをお薦めします。

 

 

例2は、「あなたが無理をしてしまうことで起こるかもしれない悲しいこと・残念なことが、できれば起こってほしくないと思っている自分である」と、あくまでも「自分がそう思っている」に留めた内容になっています。「どうしてほしい」という気持ちがあったとしても、あなたの思いを知り、どうするかは相手の裁量の範囲です。相手に対するどれほどの思いがあっても、他者には介入が許されず、どうにもできないことがあることを受け入れざるを得ないのが、現実の一端です。

 

 

「自分を安全地帯に置く」という言葉の説明の2つ目に「自己満足」という言葉を用いました。例2は、「ただの自己満足で、そこに相手をつき合わせてしまうことでは?」と思った方もいるかもしれません。文字数に限りがあるので簡単な説明になりますが、私はこのたびの連載で幾度も

 

・言葉は自分のために使ってほしい

・自分が聴いて「これでいい」という言葉を使わせてほしい

 

とお伝えしてきました。

 

 

お気づきかと思いますが、2点とも「自己満足」に通じています。「自己満足とは何ぞや」ということにもよりますが、「相手の同調を必要とする自己満足」と「自分で完結できる自己満足」では大きな違いがあります。相手は今、その思いを受け取れる状態ではないだけのことで、「あなたが無理をして、健康を害してしまうのは悲しい。できれば防ぎたい」と思ってもらえることをうれしく思わない人は基本的にはいないと思います。私は、あなたが誰かを思い言葉を届ける時、あなたの思いをあなたが望むように受け取ってほしい」という「相手の同調を必要とする」思いはグッと飲みこみ、「言って満足!聴いてくれてありがとう!」という「自分で完結できる」言葉をお薦めします。

 

 

 

この1年、言葉選びは簡単ではないかもしれないけれど、深刻ではなく真剣な言葉との付き合い方とはどんなことかを皆様にお伝えし、それを面白いと思っていただけたら…そんな思いで言葉を尽くしてまいりました。

 

 

言葉選びで迷い悩んだ時には、「自分が自分に聴かせたい言葉か/聴かせても大丈夫な言葉か」を軸に選ぶ。せめてこの点だけでも採用していただき、心を決める一助にしていただけますなら幸いに思います。

 

 

この連載も今回で最終回となります。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

皆さまこれからも、どうぞご安全に!

 

 

 

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