【読切】新型コロナ禍のコミュニケーション環境の変化に対応する! 画面越しの"言葉の伝え方” | 福岡県久留米市 久留米大学前駅【松本コミュニケーション研究所】

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【読切】新型コロナ禍のコミュニケーション環境の変化に対応する! 画面越しの"言葉の伝え方”

2021/02/19

講演・講座・セミナー・各種発表の場でのプレゼンターやスピーカーとして、あるいは参加者として、また、職場の会議に友人との飲み会、帰省…。年始の挨拶も、来年はオンラインでという方もいるかもしれません。COVIT-19の感染拡大以後、「人との対話」の形で最も変化したと言っても過言ではなかろう「画面越し(オンライン)の対話」、何か体験しましたか?

 

私は、対話や危機管理をテーマにした講演、講座、研修、1対1のセッションを仕事としており、数年前まではそれらすべてを「対面」で行っていました。しかし、思うところがあり、リスクマネジメントとして2018年からオンライン化に着手し、2019年の夏にはオンライン化の整備を終えました。自分のための方向転換ではありましたが、突如そうせざるを得ない事態にさらされた方々と比較するなら、ほんの少し準備に時間をかけることができたと思います。私の経験を買っていただき、この執筆を仰せつかりました。

 

すでに避けては通れなくなっている「画面越しの対話」への取り組みにおいて、難なく順応できた方もいれば、いまだになじめない方、諸所から急かされて必要性を理解しているがどうにも行動できない方、中には、離れて暮らす両親のサポートをそろそろとお考えの方など、現状はそれぞれだと思います。ストレスを感じている方はその軽減を。着手のきっかけをお探しの方にはとっかかりとなる何かを。そんな思いで綴らせていただきます。なお本稿は、オンラインで使用するシステム自体の選定に役立つものではありません。ご了承の上、ご覧ください。

 

 

画面越しの対話の準備~これだけは押さえておこう

対話には、話す相手が複数の場合と1人の場合の大きく2つがあり、さらに「画面越し」の対話には、「相手が見えない状態で話をする」というケースが加わります。(「相手が見えない」ケースとは、講演やセミナーで、参加者が顔出しなしで参加できる場合や、参加人数が多い場合は運営上の理由から個別の画面表示を行わないこともあり、それらのケースを指します。)

 

対象が複数であれ一人であれ、相手が見えようが見えまいが、対話の準備としては「場」「自分」「語り」の3つに大きく分類できるかと思います。どこに皆さんのヒントにしていただけることがあるか分からないので、かいつまんで3つの項目すべてについてお話させてください。

 

「場」を整える 事前の接続テストで不安を軽減する

 

画面越しでの開催で最も心配なのが、音声や画像のトラブルです。電波はさまざまな影響で変化しますので、どれほど慎重に準備を行ってもトラブルが起こる可能性をゼロにすることはできません。しかし、「やれるだけのことをやって臨んでいる」という状況は、あなたの不安を軽減してくれると思います。事前の接続テストのやり方などはインターネット上にさまざまな情報がありますので、利用するシステムに応じて検索いただけたらと思います。

 

ちなみに事前テストは、開催時とできる限り近い条件で行ってください。電波の状態は、時間帯や曜日、さらには「イベント的な影響」で変わります(イベント的な影響とは、例えば、同じ日曜日の午後でも、連休中だったり、子どもたちの長期休暇の時期と重なっていたり、多くの人がアクセスするオンラインイベントが開催されていたりすること。)イベント的な影響は、ある程度同じ場所からオンラインの経験を重ねるとつかめてきますが、情報収集には限界がありますので、トラブルも失敗も貴重な経験ととらえ、ぜひそれらを自分流の「トラブル発生時の対処マニュアル」として大事にしてください。

 

 

「場」を整える

内容に集中してもらえるよう、画面は明るく

 

年齢、性別問わず、画面は暗めよりも明るめにしておくと、見る側にとってあなたの表情がとらえやすくて助かりますし、あなたにとっても、相手が表情を探らずにすめばそれだけ話の内容に集中してもらえるメリットがあります。相手が見えないケースの場合、自分だけが相手に見られることに戸惑うかもしれませんが、聴き手が話の内容に集中できるよう手助けするのだと思い、覚悟を決めていただけたらと思います。

 

画面を明るくする方法として、自然光と人口的な光の選択肢がありますが、人工的な光を選ぶ際、その目的のためだけにライトを購入する必要はありません。日々改良されているシステムの中には、システム自体に光の具合を巧みに調整できるものが出はじめましたので、太陽が出ている時間帯での開催であれば、座る位置を窓に向かう場所にすれば光量は十分確保できると思います。ちなみに、私は特別なライトは使っておらず、作業を行うために購入したデスクランプ(LEDで光度や角度を調整できるもの)を使っています。
 

 

「場」を整える

場のアレンジを楽しむ

 

使用するオンラインのシステムによっては、「バーチャル背景」という機能が用意されています。あなたの服の色や素材、部屋の様子や色合いで表示されにくい画像や場所もありますが、試してみて機能するようでしたら、部屋の中を公開したくない方には確実に役立ちますし、対話の目的によっては検討ありの機能だと思います。講演や発表など、公的な機会であれば、会社や組織のロゴ、スローガンなどを。私的な場はもちろん、仕事上でも目的の高順位に相手との関係性の構築があるのであれば、「あなたの人となり」が伝わる背景を用意するのは、画面越しの対話だからこその楽しみ方であり、相手へのおもてなしでもあるかと思います。

 

「人となりを伝える背景」とは、具体的にどういったものでしょうか。例えば、あなたがアニメ好きであればそのキャラクター。好きな芸能人や歴史上の人物。好きなスポーツ、好きなチームのロゴ。楽器を演奏する方であればその楽器。好きな食べ物、お気に入りの場所、行ってみたい場所。その日の気分を現わす目的での、虹や青空、星空。季節に合わせた風物詩などです。

 

「自分との約束(時間)を前に、その人が(その背景を)準備してくれた」と、あなたの思いは間違いなく相手に伝わり、背景について相手が問いかけてくれればそれを会話のきっかけにできますし、あなたが何かの理由で緊張しているようであれば、自ら背景について説明する時間を設けることで、緊張を解きほぐすことができるかもしれません。画像は、インターネット上の著作権フリーのもの使う方法が主流ですが、もし撮影自体が好きであれば、ぜひ自分で撮影した画像をお使いください。お披露目の機会が、あなたの日常をいっそう豊かにしてくれるかもしれません。

 

 

「場」を整える

あなただからこその工夫も可能

 

私は、対話の目的によっては、背後に時計をセッティングしています。ちなみに私が使っているのは、デジタル表示で横410㎝×縦280㎝の時計です。

 

私がオンラインを行っている場所は、壁にちょうど良い高さの棚があるため、棚にフックをかけ、フックに時計をかける方法をとっています。しかし、都合のいい場所にフックをかけるところがない場合は、衝立や帽子・コート掛けなどを置き、それにフックをかけて時計を設置するという方法もあるかと思います。

 

部屋を公開したくないという方は、壁をバックにカメラをセッティングできる環境であればそれで対応できますが、味気ないという方はバーチャル背景を設定したり、その機能が利用できない方は衝立を購入したり、パイプハンガーと布地で衝立の代用品を作るなどの方法もあります。

なお。これはプチ情報ですが、画面越しだとあなたの画面に映る背後の文字は、時計も含め文字が反転して見えますが、画面の向こうの相手には問題なく見えていますので安心してください。

 

また、ペットボトル以外の飲み物を用意する場合には、お気に入りのカップを使用してはいかがでしょうか。使い慣れたカップがあなたの緊張を解きほぐしてくれるかもしれません。

 

案外忘れがちなのが、パソコンの電源コードの差し忘れです。充電は十分との確信があったとしても、備えあれば憂いなし。対話中は、話の内容と聴き手の反応に集中できる準備をぜひ!

 

 

「自分」を整える

 

自分の整えには「内」と「外」の二面があります。

 

「外」は、対面の時同様、TPOに合わせた装いを基本としつつ、画面越しの場合は、バーチャル背景の使用の可否に関わらず、背景の色味と着ている服の色味の相性の確認を事前テストの項目に含めておくと、より安心して当日を迎えられると思います。メイクを取り入れている方は、「オンラインで映えるメイク」について調べてみるのもお薦めです。

 

続いて「内」の整えですが、対話に関しては画面越しであれ対面であれ、「緊張してつい早口になってしまう」「早く答えなければと、思ってもいないことを口走り、後々後悔してしまう」「考えすぎて言葉が出なくなる」など、さまざまな事情がある方も少なくありません。できれば個別にお力になりたいところですが、今回何か1点に限定しておすすめするとしたら、「自分のことを相手に話してみる」ことを挙げます。「緊張して早口になってしまう時があります。聴きとれなかった時には遠慮なく止めてください」「言葉を見つけるまでに時間がかかる時があります。すぐにお答えするのが難しそうな時には時間がほしい旨をお伝えしてもよろしいですか?」といった感じです。

 

こんなことを言うのは、特に相手が仕事関係の方だった場合「甘えだと思われないか」「先に言い訳するみたいで…」と、躊躇する方もいるかもしれません。そのような方は、立場を入れ替えて想像してみることをおすすめします。相手が会議の始めに前述のようなことを話したとしたら、あなたはどう思いますか?

 

あなたがやることは難しくても、相手がそうすることで参加への緊張やストレスを軽減できるのであれば言ってもらってOK!と思っていただけますようでしたらありがたい限りです! 人の緊張は伝染する場合があります。相手がリラックスすることで、あなたもリラックスできるかもしれません。


 

「語り」への備え

 

環境がどうであれ、言葉の「選び方」や「語り」においては、これまでの経験の中で悩み、磨き、身につけてきたもので向かっていただけたらと思います。「自分の内面の整え」のところでも少し触れましたが、「対話」においてそれぞれに事情を抱えている人は少なくありません。それでなくとも苦手意識のある対話において、たとえ形式が変わったからと言って、一度にあれもこれもと取り組むことをそもそも私はおすすめしません。これまでもそうしてこられたように、経験を積む中で、必要に応じて修正や改善を試みていただけたらと思います。

 

ただ1点、画面越しの対話であえて特筆しておきたいのは、『間』への対応(力)です。以前であれば、海外との中継でのみ見かけていた「声が遅れて届くことによる違和感を覚える『間』」が、リモート出演が常態化しているテレビの生放送では特別な出来事ではなくなりました。テレビを見る人も減ってきたし、見る時間をつくれない方もいるかとは思いますが、それでも以前よりは、「間」への抵抗感は薄れたように感じています。

 

なおこの点は、接続環境(電波状況)に影響を受けることなので、経験を重ねる中で対応力を伸ばしていただくのが最も現実的ですが、何もできないわけではありません。その一つが、「話し終わりに『以上です』をつける」といった決め事を用意することです。ただし、こういった決め事は、話している間に話に集中するあまり、互いに忘れてしまうことも少なくありません。そのため、決め事があったとしてもこだわらず、相手が話し終わったのかなと思ったら「以上でよろしいですか?」と確認の言葉を投げ、相手の回答を待って先に進めたり、あなたが話し出す際に「話していいですか?」と前置きしてからはじめたりするとよいと思います。ぜひ臨機応変に!

 

また、対話の場で「間」が怖いとおっしゃる方もいます。対話によってはクールダウンの必要性を感じるときもあるかもしれません。そんな時には、間が救いになる時もあります。その日の対話の目的達成のために、システム上のやむを得ない事情すら味方につけていただけたら。そう心から思います。
 

 

画面を閉じるまでが本番!

 

最後の最後まで気を抜かない! ということも重要です。あなたがスピーカーとして招かれている立場で、システムの運営はほかの方が担っている場合であれば、必要に応じて運営者が適切に画面を切り替えてくれると思いますが、あなたが単独でスピーカーも運営も担う立場であったとしたら、終了の手続き作業も自身が行うことになります。

 

画面を閉じる作業の準備を、閉めの話をしながら、しかも画面から不自然に目線をそらさずに行えるようになるには多少の経験が必要になるかもしれません。慣れるまでの間、心配でしたら協力者を募るのも一つです。

 

ショップの外でお客を見送る定員が一瞬で表情を変えた、なんて場面に遭遇したことのある方もいるかもしれませんが、万が一にもあなたが画面越しにそんな一瞬をお披露目せずにすむよう、画面が閉じているかどうか確認が済むまでは、表情を保っておくことをおすすめします。

 

 

マスク着用で反応が…

 

マスクを着用している相手の表情がわからず戸惑ったことはありますか? 対象が1人であれ複数であれ、カメラに向かう環境次第で、双方マスクを外して画面に向かう事は可能ですし、画面表示が個別であれば、まだ表情もとらえやすいと思います。しかし、例えば相手が複数名で会議室などに集まっているという状況だと、当然マスク着用のままでの参加となります。加えて、複数名が画面に収まるので、一人ひとりの表情がそもそも見えづらいという状況に対応することになります。

 

マスクがあろうとなかろうと、単独と集団では、ほかの人を意識してそもそもの反応が違ってくるのに、さらにマスクで表情がとらえづらくなった今、聴き手の反応をモチベーションアップに活用している方や、進行に反映したい方は、相手が反応できる仕組みを用意することが役に立つのではないかと思います。

 

これまでもやってきたであろう、終了後にアンケートや質問の時間を設けるのはその一つですし、例えば「いいね」のような相手の反応を表現できる機能が備わっていればそれで、それを使うのもよいでしょう。もしくはチャットで、質問がある場合や共感できた時、その逆の時、意思表示をしていただけたら、可能な範囲で対応しますというデザインにするのも手です。ほかにも、システムを通じてではなく、本人たちにうなずきとか首をかしげるとか目を見開くとか、リアクションを大きめにとっていただけるように依頼するなど、「今日この時間を互いにとってより有意義なものにしたいと思っている」ことを示し、相手に協力を求めた上で、本人が望めば行動を起こせる選択肢を用意してみるのも一つの方法です。

 

大学などでは、オンライン授業の方が学生からの質問が増えたという話もあります。画面の向こう側の相手のリアルタイムな反応も気になるでしょうが、そもそも、人の表情と思っていることや考えていることは必ずしも一致しませんし、咀嚼するまでに時間を要する方もいます。準備を尽くして、当日は「自分は伝えたいことを伝えられているか」と、相手ではなく自分にできるだけ集中していただけることを私はおすすめします。

 

 

百聞は一見に如かず!

 

ここまでいろいろお伝えしてきましたが、まずは身近であなたが気軽に参加できそうなオンラインの場があれば参加してみませんか? 百聞は一見に如かず! 千里の道も一歩から、です。

 

「オンラインはどこでもドアなんだね」

 

これは私のクライアントの中で最後までオンライン化に抵抗していた方が、初体験の最後に伝えてくれた言葉です。COVIT-19の感染拡大で失ったものはあまりに多く、新たな形に慣れるまで、なじめるまで、時間がかかるかもしれません。そして、何度も申し上げますが、オンライン交流はすでに避けては通れません。どうせ避けては通れないのなら、新たな形での人との対話を、あなたなりに楽しんでいただけるならば。そんな願いを込めて、この先も一日も長く安全にお過ごしいただけますように!

 

 

この記事の掲載誌はこちら

「体験知と根拠で3領域の看護がわかる!呼吸・循環・脳実践ケア」12・1月号

日総研出版発行