連載「人間関係を滑らかにする『言葉』のおけいこ」第4回 | 福岡県久留米市 久留米大学前駅【松本コミュニケーション研究所】

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連載「人間関係を滑らかにする『言葉』のおけいこ」第4回

2020/06/19

Lesson4 いちいち

あなたは自分の日常に、平穏と刺激、どちらを求めていますか?

現実において自分でどうにかできることには限りがあるからこそ、自分のご機嫌(くらい)は自分で調整してあげよう!そう望ませてくださるあなたのお役に立てたらの思いを込めて、今回もよろしくお願いいたします!

 

 

 

イライラの追体験

ある時、クライアントのAさんが上司との「報連相」に関する悩みを聴かせてくれました。その対話の途中、「いちいち(上司に)尋ねたほうがいいですかね?」との発言がありました。

 

 

私は、「今、Aさんは『尋ねたほうがいいか』を自分で検討するにあたり、"いちいち“を付け加えずにはいられない心境なのですね」と伝えました。すると、Aさんはハッとし、“自分が感じてきた過去の苦々しい体験を繰り返さないために"という自分への思いやりのもとに取り組んでいる対話のはずなのに、自分の影響(自分が自分に思い出させている)で、かえって自分にイライラの追体験をさせていることに気がついたようでした。

 

 

 

相手がいての対話であろうと、ひとり頭の中でめぐらす対話であろうと、あなたを悩ませている課題に対する予防や改善策を考える場合、本来であれば

 

・何が起こったのか

・それが起こったのは誰の(何の)どんなことが要因であると自分は考えるのか

 

といったことを思い起こせば事足りるはずです。ところが、その時に味わった感情までをも思い出し、その影響で、冷静かつ客観的に事を振り返り、分析し、対処法について思考することが難しくなる時があります。

 

 

 

自分の感情と折り合いをつけるステップ

人は、感情がざわついている時、自分が思う以上に言葉や語気が乱暴で荒々しくなりがちです。場合によっては、それによってあなたの協力者であるはずの対話相手との関係にまでひずみを生み出しかねません。

 

 

人間関係のひずみを拡げないためにも、また自分自身の心の健全さのために、ざわついている感情があなたに強く影響を及ぼしてしまっているような時には、まず、「出来事を通じてあなたが味わった感情や、抑えたり飲み込んだりした自分の言葉や思い」を、あなたが信頼する相手にただ聞いてもらい、あなたを揺さぶるそれらとの折り合いをつけるステップをご用意することをお薦めします。

 

 

組織のトップであろうと、管理職であろうと、経験豊富なプロフェッショナルであろうと、親であろうと先輩・上司・指導者であろうと、その役割や肩書を通じてあなたが担う姿の前に、誰しも人間です。感情的にもなりますし、自分とは違った価値観に対して自分でも戸惑うほど反応してしまうこともあります。

 

 

苛立ち、腹立ち、悲しみ、残念さ、どんな種類の思いであろうと、感情を揺さぶられた体験を伴った話題に向き合う際、それに関連する自分の中にある未消化の何かに気がつけた時には、いったん足を止め、まず、自分の状態について自分に問いかけ、声からの声に耳を傾け、自分を取り戻す時間をつくってあげてください。あなたが自分のために確保したその時間は、必ずや、その後の事の運びに役立ってくれます。

 

 

***

 

 

Aさんの話に戻りましょう。「いちいち」という言葉を自分に使わせることで、未消化の感情に今も自分が影響を受け続けていることに気がつけたAさん。Aさんにとって大切なことは、決して上司との関係をややこしくすることではなく、上司との間で的確な報連相が行われることです。まして、仕事上、自分に影響のある人とはいえ、自分以外の誰かのことで自分のご機嫌が損なわれるなんてもってのほか!自分の機嫌の舵を取り戻すという当初の目的に頭も心も整われたので、「いちいち尋ねる」を「あえて尋ねる」に変換し、行動してみてはどうかと提案しました。

 

 

 

ほころびのきっかけは実に些細な事

次に、仕事仲間とのプロジェクトの進行が思わしくないとの悩みを抱えたフリーランスのBさんとの対話では、「推し進めるにはどうしたらよいですかね?」という言葉が登場しました。

 

 

ピンときた方もいるかと思います。「進めるにはどうしたらよいですか?」でもまったく問題ないはずのところを、Bさんは、自分に「推し進めるには」という言葉を使わせているのです。Bさんに確認したところ、プロジェクトを進めたい気持ちは確かだが、仲間の考えや気持ちを置き去りにし、強引に事を進めるつもりはいっさいないとのことでした。

 

 

もし、「推し進める」という言葉を使っている自分に気がついてあげられないまま、仲間との対話を行ったとしたら、Bさんは、「強引に事を進めるつもりの人」と誤解されてしまったかもしれません。

 

 

たかがこの程度でと思う方もいるかもしれません。しかし、人間関係のほころびのきっかけは、実に些細な事である場合も多いものです(ちなみに、大きなことは瞬時に亀裂になるのでわかりやすい!)。

 

 

 

本連載で幾度もお伝えしていますが、言葉について人が考えるとき、「自分に対して自分以外の誰かから掛けられる言葉」や「自分が自分以外の誰かに掛ける言葉」について悩みがちかもしれません。しかし、「自分が使って自分に聴かせている言葉=自分が自分に選ばせている言葉」の影響は見過ごせないものだとつくづく思います。

 

 

このたびのAさんのように、「いちいち」や「わざわざ」といったとげが見え隠れする言葉を自分に選ばせ、使わせることで、自ら、自分の感情をざわつかせ、かき乱し、逆なでしてしまっているときもあるかもしれません。

 

 

引き続き自分に選ばせている言葉に耳を傾けていただき

 

1.つけなくても意味が変わらないのかもしれない言葉を使っていないかどうか意識してみる

2.使っている自分に気がついた時にはまず誰かに話を聴いてもらい、自分の事情を理解する時間を持ってみる

 

の2つを試してみていただきたいと思います。

 

次回は、これまでの内容を一度、振り返っておきたいと思います。

今日もご安全に!

 

 

 

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